会社を設立する際、資本金の額は非常に重要な要素です。
日本では2006年の会社法の改正により、資本金1円でも会社を設立することが可能になりました。最低資本金の規定がなくなったため、設立時の資金が少なくても会社を始められる点は魅力的ですが、問題はないのでしょうか?
資本金1円の問題点
1.信用力の低さ
資本金は会社の経営基盤を示す要素です。
資本金が極端に少ない場合、取引先や金融機関からの信用を得るのが難しくなる可能性があります。特に、取引先が資本金を確認する場合、1円という数字は「この会社は経営基盤が脆弱ではないか?」と懸念されることがあります。
2.資金調達の制限
金融機関から融資を受ける場合、資本金は審査時の重要な基準となります。資本金が低すぎると、銀行からの資金調達が困難になることがあります。また、事業拡大や設備投資のための資金が必要になった際に、適切な額の資本金がないと不利な条件での資金調達を強いられることがあります。
3.赤字で即債務超過に
会社設立後、営業活動で初期費用や経費がかかるため、最初は赤字になることも少なくありません。資本金が1円だと、少しの赤字でもすぐに債務超過状態になり、経営的に非常に不安定な状態となります。債務超過は、会社の継続に関して大きなリスクを伴うため、注意が必要です。
4.設立後の追加費用
設立時に資本金が1円だった場合でも、事業を運営するためには実際に必要な費用がかかります。例えば、事務所の賃貸料や従業員の給与などが必要です。資本金が低すぎると、すぐに資金繰りに苦しむ可能性が高くなります。
設立時の考慮事項
1.事業の内容に応じた適切な資本金設定
資本金は事業の内容や規模に応じて設定するのが理想です。例えば、少額の初期投資で始められる事業ならば、資本金も少なくて済むかもしれませんが、ある程度の信頼を得るためにも100万円〜300万程度は設定することを検討しましょう。
2.税制面の影響
資本金1000万円未満の会社は、法人住民税の節税や消費税の納税義務免除による節税などの税制面での優遇措置を受けることができます。一方、資本金が1,000万円以上になると消費税の課税事業者となり、税負担が増える可能性があります。
したがって、資本金は税制面も考慮して決定する必要があります。
3.信用力を重視した資本金の設定
経営をしていく上で、取引先や金融機関からの信用力は大切です。
資本金が少額であれば、その分だけ会社の信用力が低下するリスクがあるため、資本金額は信用力も考慮しなければなりません。
4.自己資金の範囲での設立
自己資金があまりない場合、事業を始める際に個人で借金をしてまで資本金を増やす必要はありませんが、自己資金の範囲で可能な限り資本金を確保するのが健全です。
無理なく準備できる範囲で資本金を設定し、事業の安定性を確保することが重要です。
まとめ
資本金は1円でも会社を設立できますが、信用力の低下や資金調達の困難さ、赤字によるリスクなど、現実的にはいくつかの問題が生じる可能性があります。会社の信用力や経営の安定性を考慮し、事業規模に応じた適切な資本金額を設定することが望ましいです。特に事業拡大や資金調達を視野に入れている場合は、100万円〜300万円程度の資本金をおすすめします。資本金の設定は、長期的な会社経営に影響するため、慎重に検討することが重要です。